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会長挨拶
会長就任にあたって
辻井 敬亘 (京都大学 化学研究所 教授) |
繊維学会会長を仰せつかりました辻井でございます。微力ながら誠心誠意努める所存ですので、皆さま方のご支援、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。会長として、これからの2年間をお引き受けするにあたりまして、ご挨拶を申し上げます。
新理事会体制で取り組むべきと考えております事項につきまして、簡単にお話させていただきます。なお、副会長として、共立女子大学の村瀬浩貴先生には運営を、東京家政大学の濱田仁美先生には企画を、東レ株式会社の増田正人様には財務を担当いただき、理事・監事の皆様のお力添えを得て進めてまいります。
昨年度、将来構想委員会で検討いただき、「心躍る集いの場へ」と題して13のアクションプランを中間答申いただきました。今後、更なるブラッシュアップと理事会等での審議が予定されている段階ですので、具体的な内容に立ち入ることはいたしませんが、その中で次の4つの柱が謳われています。
・学会の魅力度向上
・新分野開拓
・人材育成を含めた学術と技術の伝承
・会員増強を含めた運営基盤強化
これらを推進すべく、3つの観点で、課題抽出と対策を検討してまいります。一つは、学会の基軸である学術技術の発展に資する情報交換や人材交流・ネットワーク形成をいかに進めるか、二つ目として、異分野との連携や異分野からの参画を促すための、さらには、国策にも反映いただくための情報発信をどう強化していくか、そして、三つ目が、これらを支える事務局体制をどう改善していくかになります。
現実的にはもちろん、マンパワーや財政的な制限がありますので、如何にエコなプラットフォームを構築、提供していくかが課題と考えています。これにつきましては、コロナ禍を経験し、否応なくオンライン等を活用した運営を強いられました。一方で、本年度の年次大会のように、やはり対面の重要性をあらためて強く思ったところでもございます。両方のメリットを最大化すべく、メリハリをつけた対応が必要と考えます。生成AIやDXなどの技術革新もあり、あらたな工夫にも着手できる好機と思っています。
特に現状、事務局の方々には学会活動をしっかり支えていただいていますが、その業務負荷は過大となってしまっています。事務局業務のスリム化と待遇改善も必要です。もちろん、必要に応じた体制強化も検討する必要があるかもしれません。このほか、財政基盤の強化や三大行事や講座、支部との連携などにつきましても検討していきたいと考えている次第です。
以上、繊維学会としての基盤強化を進める一方で、繊維系三学会統合問題への対応も重要なミッションと考えています。先の総会におきましては、大田会長より現状ならびに今後の方針が説明されました。三学会からの委員によるWGで課題毎に検討し、また、三学会の会長・副会長等で組織する「繊維系三学会合併に関する協議会」で相談していくことになりますが、繊維学会内としましては、会員の皆様からご意見を伺う機会を設け、透明性をもって理事会での議論を進めてまいります。
蛇足となりますが、繊維学会との関わりについて、私自身の思いや私事のお話をさせていただきます。学会創立80周年を迎えて学会年表も拝見し、学会発足時の状況やその後の発展、さらに、年次大会の特別講演では、繊維産業が日本の近代化を牽引した歴史などを再認識しました。先人の方々の先見性、リーダーシップ、決断、それを支えたチームワークに、今更ながら、尊敬の念を強く抱いた次第です。
私は京都大学の高分子化学科に入学したのですが、前身は繊維化学科で1941年の創設です。繊維学会もほぼ同時期の1943年に設立し、1900年ころから始まった産業近代化の流れから、学術面を強化する体制ができていったものと理解しています。私自身、繊維学会と深く関わるようになりましたのは、京都大学の化学研究所に助手として着任してからで、35年になります。助手に採用していただいたのが宮本武明先生で、天国より「辻井くん、しっかり努めなよ」と言われている気がしています。学会の本部運営に関わらせていただいたのは、10年ほど前に関西支部長として学会理事に選任いただき、奈良での夏季セミナーを担当させていただいたときからになります。実行委員会として大変ではありましたが、委員の皆さんからいろいろなアイデアを出していただき、皆さんとの一体感が日に日に形成されていったことを覚えています。理事会でも、何かと言えば協力をお願いし、手厚くサポートいただきました。このような一体感を直に感じられたことは私にとっての大きな財産であり、学会への愛着心に繋がっています。最近は本務が忙しく、プラスアルファの業務への余裕がなくなっている中、シニアになったものの「たわごと」かもしれませんが、是非、そのような学会であればと思っている次第です。
最後になりますが、大きな自然災害のほか、地球温暖化、環境問題などが深刻となっています。これに対向するパラダイムシフトを実現するには、これまで以上に広域・多分野での連携とコミュニケーションが重要になっています。繊維科学・技術分野は、繊維やテキスタイルそのものの基礎・応用研究を機軸としつつ、人文社会科学を含め、多方面の境界領域に広がりをみせています。是非、国内外に向けて、繊維関連での提言がこれまで以上にできる、発言力のある繊維学会を目指したいと思っています。繊維学会には様々なステークホルダーがいらっしゃいます。できるだけ多くの声を聞かせていただこうと思っています。このために、各支部や研究委員会との意見交換、企業の方々とは、例えば、以前に企業研究所長会議なるものがありましたが、そのような機会の設定も相談させていただきたいと思っています。
会員ならびに関係各位におかれましては、これまで以上のご指導とご鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げまして、私の就任の挨拶とさせていただきます。
(2024年6月14日総会での所信表明を一部改変)
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