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日本衣料管理協会、50年の歩みに思うこと
Japan Association of Specialists in Textiles and Apparel, Thinking about History in 50 Years
日本衣料管理協会は今年の12月6日に創立50周年を迎えます。本協会の創立は1971年12月6日であり、衣料管理士(Textiles Advisor、1級と2級があり、略称はTA)の資格制度を発足させました。この10年後の1981年に、繊維製品品質管理士(Textiles Evaluation Specialist、略称はTES)の資格制度を発足させて、繊維・ファッション産業の人材養成を行い、今日に至っております。TAでは現在までに約55,600名の資格者を認定し、また、TESでは約13,800名の資格者を認定し、現在、約8,250名のTESが繊維・ファッション関連の分野などで幅広く活躍しております。
本協会は1976年に通商産業省(現経済産業省)所管の社団法人となりましたが、公益法人改革に伴い2011年に内閣府所管の一般社団法人に変わりました。創立以来、今日まで半世紀にわたる時代の流れは、我が国の繊維・ファッション産業の生産・流通・消費の分野に様々な変化をもたらしましたが、近年においてはグローバル化が急速に進行しており、サプライチェーンも多様化しています。また、サステナビリティや脱炭素化の視点も、ますます重視されてきています。TAは主に女子大学・短期大学の被服系学部・学科で、企業と消費者のパイプ役を果たす人材の養成を、また、TESは繊維製品の消費者苦情を未然に防止する人材の養成を目的として設けられた資格であり、生産・流通・消費の変化に対応する視点から、TAおよびTESの資格制度は何回かの見直しを行ってきました。
現在、TAの資格認定には、「材料・染色・加工」「企画・設計・生産・品質管理」「流通・消費・消費者問題」「TA実習」の各分野から一定の単位を取得し、1級では43単位以上、2級では23単位以上の取得が必要です。また、TESの資格取得には、短答式の「繊維に関する一般知識」「家庭用繊維製品の製造と品質に関する知識」「家庭用繊維製品の流通・消費、消費者問題に関する知識」、記述式の「繊維製品の品質・性能に関する消費者苦情処理の事例」「論文」の試験に合格することが必要です。
TES試験出願者の最近の動向は、2009年の2,429名から2015年の2,736名に向って増加した後、2019年の2,239名に向かって逆に減少しましたが、2020年はコロナ禍の影響もあり1,829名でした。一方、TA認定者は、2008年度の1,139名から2020年度の687名に減少しましたが、特に2級TA認定者が大きく減少しました。これは被服系の女子大学・短期大学のなかで、組織の改組改変などによりTA養成を中止する学校が出たことが大きな理由であります。上記のような動向に対処して、TA資格制度について、TAのあるべき姿、認定制度、認知度の向上、養成校と企業との連携の強化などを検討するために、昨年度に「TAワーキング」を発足させました。また、TES資格制度についても同様に、将来に向けたTESのあるべき姿、認定制度、試験内容などを検討するために、「TES将来構想ブロジェクト」を発足させました。本協会では,TA、TESの資格認定事業のほかに、TA教育用テキスト、TES受験用テキストなどの出版事業、TA養成教員の研修会・セミナー・講習会、海外視察・ブラッシュアップ講座などの研修事業、調査事業にわたり数多くの活動をしてきましたが、そのなかから調査活動を取り上げてみたいと思います。TA関係では、「衣料の使用実態調査」があり、1978年から毎年調査を実施しています。TA養成課程の学生が、学生自身、学生の父親・母親・兄弟・姉妹につき、衣料の購入・所持・着用・廃棄の状況を調べるものであり、このような長期にわたる実態調査は全くないといえます。また、TES関係では、「衣料の消費者苦情調査」があります。消費者から持ち込まれる衣料の苦情品について、その原因を究明・分類するものであり、できればデータベース化を目指す調査で、消費者苦情の品質情報展や、TES試験用の教材などへの活用が考えられます。
TES資格者による組織に「TES会」があります。TES会は様々な業種の人により構成されている点が特徴であり、東日本支部、中部支部、西日本支部、北陸支部、中国支部の5支部に分かれて活動しています。また、TA資格者による組織に「TAの集い」があり、関東TAの集い、中部TAの集い、関西TAの集いに分かれて活動しています。TESおよびTAの資格制度の発展には、TES会、TAの集いの協力が不可欠であり、TES会には各地域の企業などへのTES資格制度のPR活動に、TAの集いには社会で活躍しているTAと養成課程の学生との交流活動に、引き続いて特に協力を頂きたいと思っています。
日本衣料管理協会が繊維・ファッション産業の人材養成で成果をあげ、50周年を迎えるまでに発展できたのは、多くの諸先輩の方々の献身的な協力に依るところが大きく心から感謝しております。
小林 茂雄 (日本衣料管理協会 会長)
*繊維学会誌2021年8月号、時評より
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