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福井大学繊維・マテリアル研究センターの現状と将来
The Current Status and Future of Research Center for Fibers and Materials, University of Fukui
2019年4月に福井大学繊維・マテリアル研究センターが設立されました。存在自体は繊維学会誌の広でもお知らせしていますので、読者のみなさまには少なくともそういう組織があるという認識は持たれていると期待しています。設立の経緯を簡単に説明しますと、本学の概算要求事業により本学と地域の双方が強みを持つ研究分野を推進する「産業化研究特区」が創設され、その第1号として繊維・機能性材料工学分野がターゲットになり、繊維学会誌でも特集が組まれた本学工学研究科繊維工業研究センターを発展的改組させることにより全学組織として設立されたのが当センターです。
福井大学繊維・マテリアル研究センターの目的は、「本学における繊維・マテリアル分野に関する研究を推進し、地域産業の発展に寄与することを目的とする。」です。その目的の達成がセンターの業務です。その業務を遂行する組織として、センターの教員構成は3名の専任教員と、センターの活動を支える56名の兼任教員で構成されています。また、センターの管理運営の基礎である運営委員会には、前身の工学研究科附属繊維工業研究センターの伝統を受け継ぎ、5名の学外有識者に参画いただいています。繊維・マテリアル研究センターは学内に占有している研究スペースはありますが、建物を持たないヴァーチャルな組織です。言葉を換えれば専任教員・兼任教員のそれぞれの研究室がこのセンターの活動拠点であるともいえます。
繊維・マテリアル研究センターが実施する主な事業としては、①繊維・機能性材料工学分野の基礎研究・開発の推進、②県内外の研究機関や企業との共同研究の推進、③産官学との交流、があります。毎年発刊している年報に1年間の活動を記載していますので詳細はそちらをご参照ください。設立年であった2019年は、専任教員の採用などの組織整備や設立記念式典の開催など定常的な活動を行うための準備段階でした。そして2年目にあたる2020年は、本格的に活動をしようともくろんでいた矢先に新型コロナウイルス感染拡大により対外活動が大幅に制限されました。いきなり出鼻をくじかれた状況でしたが、専任教員が中心となって県内企業への訪問も可能な限り実施するなど、活動を展開してきました。また、専任教員の山下義裕教授が中心となってNEDOやAMEDに申請した研究テーマが採択され、工学部と医学部がある大学における研究面での課題の一つとなっている医工連携が繊維・機能性材料工学分野でも実現できました。加えて、本年3月にオンラインで開催した当センターの研究発表会では繊維学会北陸支部の共催も受け、70名近くの参加者があり、盛況でした。センター宛てに繊維研究に関する問い合わせも来るようになり、徐々にですが繊維・マテリアル研究センターの存在が浸透しているのではないかと勝手に考えています。
当センターが設立されたときに、目標とする成果イメージとして以下のことを広告などで示しました。
①研究成果を「もの」へ:県内企業、福井県工業技術センターと連携を取りながら、本学の研究シーズを「もの」に展開し、社会へ還元するとともに、定常的な外部資金の確保や共同研究開発体制を確立・維持する。
②バーチャルな研究教育地域構想:学生が共同研究などで実際に企業などに出向き、研究・開発活動を行うことで企業が教育の場となり、バーチャルな研究・教育地域が構築でき、人材育成にも貢献できる。設立して3年目を迎える当センターがこの目標とする成果イメージに向かっているかどうか、まだ評価するだけの目に見える成果は得られていませんが、この目標とする成果イメージに近づけるよう、活発な活動を展開していく所存です。また、以前、繊維ニュースの取材を受けたときに、当センターの理想像として「地域企業の駆け込み寺になること」という話をしました。これは常に新しい研究シーズや成果を生み出すことのほかに、地域に役に立つセンターであることも大事であるとの考えに基づくコメントです。「なぜ、福井大学に繊維・マテリアル研究センターがあるのか?」という問いかけを常に意識しながら活動を展開することがセンターにとっては大事であると考えます。
いろいろと厳しい時代となり、福井大学繊維・マテリアル研究センターに対する要求度も学内外問わず年々高くなっています。福井大学繊維・マテリアル研究センターは、繊維・マテリアル分野の研究・教育を推進し、日本の元気な繊維産地をもっと元気にすること、みなさまにお役に立てるセンターとなること、さらに世界の繊維・マテリアル分野の発信基地になることを目指して、活動を展開してまいります。福井大学繊維・マテリアル研究センターに対して、暖かいご支援、ご鞭撻を賜りますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
田上 秀一 (福井大学繊維・マテリアル研究センター 教授)
*繊維学会誌2021年11月号、時評より
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