SFST's Voice
LINKS
- Home
- SFST's Voice
- 第51回繊維学会夏季セミナー 開催に向けて
第51回繊維学会夏季セミナー 開催に向けて
In Preparation for 51th Summer Seminar of SFSTJ
「持続可能な社会」とは「サステナブル(Sustainable)な社会」とも呼ばれ、インターネットで調べると「地球環境や自然環境が適切に保全され、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の要求を満たすような開発が行われている社会。」とあります。石油や水といった地球の資源を多く利用しながら発展してきた繊維業界にとって、持続可能な社会の実現に寄与することは大きな難題です。その難題を解決するには、これまでとは異なる考えの下でイノベーションを起こす必要があります。その処方箋のひとつとして、異種のものの組み合わせ・掛け合わせによって生み出すこと、いわゆる「ハイブリッド」な視点での技術開発が挙げられます。
北陸支部が担当となった今年の夏季セミナーは、「持続可能な社会へ向けた次世代繊維技術の新たなる可能性」をメインテーマに据え、オンラインと現地での開催を融合した「ハイブリッド」形式で開催すべく、準備を進めております。活性度の高い繊維産地として全国的にも注目されている北陸地区で、繊維産業において解決すべき課題となっている持続可能な社会への対応に寄与すべく繊維技術の可能性について、深く議論できるセミナーを企画しました。
特別講演は、技術講演と文化講演の 2 件行います。技術講演では、日本化学繊維協会 専任副会長・理事長の富吉賢一氏より、「繊維業界におけるサステナビリティ -課題と展望-」と題し、持続する時代に向けて繊維業界が取り組むべき課題及び展望についてご講演いただきます。また、地域の特色をテーマとした文化講演では、福井大学 特任教授の細谷龍平氏より、「ウイリー・グリフィスと幸福の足袋(仮題)」と題し、福井藩校の教師として明治期に活躍した米国人のウィリアム・E・グリフィスについて、その人となりや心境、人間関係についてお話しいただきます。2 日間にわたる分科会セッションでは、北陸地区のアカデミアが中心となって重点的に取り組んでいる研究分野である1繊維・機能性材料、2ナノファイバー、3バイオ・生分解性材料、北陸産地の核となる産業分野である4染色・機能加工、5複合材料、さらに6北陸地区で実施している特色ある産学官連携の取組、以上の合計6 つの内容を企画し、それぞれのテーマについて第一線でご活躍されている研究者や技術者より、最新研究や事例紹介についてご講演をいただきます。新型コロナウイルス感染状況が収束をむかえていないため、恒例の懇親会や支部内の企業見学などの企画は残念ながら実現できませんでした。これらを楽しみにされていたみなさまにはたいへん申し訳なく思いますが、その分を補うべく、持続可能な社会へ向けた繊維産業・繊維技術の目指すべき方向性や可能性を知ることができ、みなさまと深い議論ができる、非常に中身の濃い 2 日間の夏季セミナーになっています。
今年になって「ハイブリッド開催」という言葉が学会誌や学会ホームページの行事欄で見られるようになりました。「ハイブリッド」とは、復唱すると「異種のものの組み合わせ・掛け合わせによって生み出されるモノあるいは生き物を意味する語」であり、学会行事にあてはめると、現地参加とオンライン参加の組み合わせ・掛け合わせで生み出される行事であると言えるでしょう。「ハイブリッド開催」は、Face to Face の交流を望む声に対応できる「オンサイト(会場)」、職場から参加できる利点の大きさから継続を望む声が多い「オンライン」、の双方の要望を満足できる参加者フレンドリーな開催方法である一方で、オンサイトの会場とオンラインシステムの両方を準備する必要があり、加えてオンサイトの会場への参加者数の読みが難しく、主催者泣かせの開催方法といえます。ただ、少なくとも新しい時代の開催方法として、特に夏季セミナーのような講演聴講が中心となる行事では今後の主流となっていくと考え、先にも述べましたように、今回の夏季セミナーは「ハイブリッド」開催で準備しています。今回ご出講をお願いしている講師の先生方には、可能であれば福井へお越しいただいてのご講演をお願いしており、多くの方々にご協力いただく予定です。
持続可能な社会の実現に向けて、繊維業界はなにができるのかという命題は簡単には解決しませんが、いわゆる「ハイブリッド」な視点から攻めていけば、その解決のヒントが見つかるかもしれません。かなり強引ですが、今回の夏季セミナーのメインテーマの解決手段と開催方法がつながったことになるかといえるのではないでしょうか。新しい時代に向けたメインテーマのもと、新しい方法で開催する今回の夏季セミナーは、オンサイト参加でもオンライン参加でも参加者にとって有益なセミナーになると確信しています。多くのみなさまのご参加を実行委員一同、こころよりお待ち申し上げます。
田上 秀一(福井大学 繊維・マテリアル研究センター 教授)
*繊維学会誌2022年6月号、時評より
- Home
- SFST's Voice
- 第51回繊維学会夏季セミナー 開催に向けて