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化繊産業の課題と化繊協会の取り組み
TChallenges of Chemical Fiber Industry and Activities of Japan Chemical Fibers Association
Sustainable Development Goals(SDGs)は17の目標と169のターゲットを示しています。これは、人間と地球の繁栄のために「やるべきことのリスト」とされており、目標の実現そのものよりも大切なことは、これらを通じて、私たちが暮らしている世界を変革する姿勢への共感と実行であると思います。世界を変革するわけですから、世界の一員である私たち一人一人が自らを変革する事が極めて重要です。今、企業・産業に求められるサステナビリティ・トランスフォーメーションが目指すべきはこうした個々の変革、行動変容にあることを踏まえながら、日本化学繊維協会(以下、化繊協会)では、サステナビリティの推進と、それらをアジアの化繊産業と協力・連携していく事を大きな課題として取り組んでいます。
1.サステナビリティの推進
化繊協会では、2021年に「サステナビリティ対応方針」および「カーボンニュートラルに向けた取り組み」をまとめ、リサイクル繊維などの循環経済の実現に資する環境配慮型繊維について、グリーン購入法やエコマーク制度を活用し、その普及に努めています。
一方、化繊の製造・加工工程や化繊製品による環境負荷の低減も重要な課題であり、製造・加工工程でも、温室効果ガスの排出抑制、環境負荷物質規制への対応に取り組んでいます。さらに、マイクロプラスチックが世界的に重要な課題になっており、化繊協会は、洗濯時に排出される繊維屑の量を測定する方法をカケンテストセンターと開発し、経済産業省の協力も得て、そのISO 化を進めています。マイクロプラスチック問題の解決には関係業界との連携も重要であり、環境省のご助力も得ながら、衣料などの繊維製品、洗濯機、洗剤等の業界とも協議を進め、対策案を検討しています。環境配慮型繊維製品の普及のためには、環境性能の見える化も課題です。そのためリサイクル繊維やバイオマス繊維の表示等に関するJIS化を検討しています。これにより消費者が安心して環境配慮型製品を購入できるようにしたいと考えています。
また化繊協会は2022年10月に「炭素繊維サステナビリティビジョン2050」を取りまとめ、公表しました。炭素繊維は製造段階のCO2排出量は少なくないものの、最終製品の使用段階にCO2 排出量を⼤幅に削減できる素材で環境負荷低減に貢献しています。政府の2050年カーボンニュートラル宣⾔を受けて、もう⼀段の環境負荷低減対策が必要と考え、業界が⽬指すべき⽅向性や 2050年までのビジョンを取りまとめました。
サステナビリティの推進は協会活動の方向性のひとつの柱であり、今後も、①再生型リサイクル(PETボトルリサイクル)、②回収循環型リサイクル(繊維to繊維リサイクル)、③バイオ化繊、④マイクロプラスチック、⑤カーボンニュートラル、⑥化学物質管理・環境負荷物質排出抑制の6つのテーマで取り組みを加速し、産業だけでなく社会と個人の行動変容を支え、実現していきます。
このほかに近年社会的要請が高まっているのが、サプライチェーン上の人権や労務問題です。このほど日本繊維産業連盟が「責任ある企業行動ガイドライン」を、経済産業省が全産業向けに「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」をまとめました。化繊協会はサプライチェーン上の人権問題をきわめて重要な課題ととらえており、業界ガイドラインをベースに課題整理や啓発活動を実施し、ガイドラインの周知・徹底を図ることとしています。
2.アジア化繊産業会議
社会、経済がグローバル化しており、サステナブルな化繊産業を実現するには、世界的な連携が必要です。世界化繊生産の9割を占める国・地域が集まるアジア化繊産業会議は、連携を進める貴重な場となっています。
2019年4月にインドネシア・バリで開催された第12回会議では、マイクロプラスチック問題など、アジアの化繊産業にとってもサステナビリティへの対応が重要であることが確認されました。第13回会議は、コロナ禍で開催が危ぶまれましたが、喫緊の課題に関する議論の延期は好ましくないと判断し、サステナビリティをテーマに、二度に分けてオンライン会議として開催しました。2021年4月に開催されたパートⅠ会議では、日本が議長国となり、活発な議論の末、アジア化繊産業のサステナビリティに関するポジションペーパー「持続可能な社会の実現を支えるアジアの化学繊維産業」を採択し、会議終了後、世界に向けて発表いたしました。また、2022年4 月に開催されたパートⅡ会議では、上記のポジションペーパーで整理された課題に関し、その後の進捗状況など活発な議論を行いました。PETリサイクル、CO2削減、マイクロプラスチック問題への対応、サステナビリティを巡る標準化促進は各国・地域で様々な取り組みが進んでいる事を確認しました。加えて、繊維to繊維リサイクル、植物由来原料の活用はアジア化繊産業共通の課題であることが認識され、サステナビリティに関する取り組みをさらに進めるため、連盟メンバー間の情報共有と協力を通じ、各課題に対する適切なフォローアップを進めることに加え、政府・関連業界・消費者に対しても支援、協力を求める必要があることを確認しました。詳細は「持続可能な社会の実現に向けたアジア化繊産業の取組と新たな課題」にまとめ公表いたしました。
今回の会議で、サステナビリティを軸にアジアの連帯感、求心力がさらに高まり、2024年に韓国で開催予定の次回会議に向け、連盟会長国として、日本がこれらの推進を積極的にリードしていく所存です。
内川 哲茂(日本化学繊維協会 会長)
*繊維学会誌2022年12月号、時評より
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