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コロナ禍での行事開催を振り返って
Look Back on Holding Events underCOVID-19 Crisis
2020年9月号の繊維学会誌の時評に、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「繊維学会のニューノーマル」と題して、繊維学会で初めてオンライン行事(秋季研究発表会)を開催する心境を、企画担当の理事の立場から述べさせて頂きました。昨今、新型コロナの二類感染症から五類感染症に引き下げが現実味を帯びる中、あれから二年と半年のあいだ、本学会の開催行事がどのように変化してきたのか、振り返ってみたいと思います。
繊維学会で初めてオンライン行事として取組んだ2020年の秋季研究発表会では、デジタル機器に強い若手の先生方を中心に実行委員をお願いし、いくつかの反省点を残しながらも、参加者270人、広告協賛11件、収支差約105 万円と成功裏に終了することができました。あの大変な時期に、ご協力頂きました企業様、会員の皆様に改めてお礼申し上げます。続く応用講座、技術講座についても完全オンラインで開催され、それぞれ110名と102名の方々が聴講されました。近年になかった盛況ぶりに関係者とともに驚きの色を隠すことが出来なかったことを思い出します。
しかし、その後も新型コロナの状況は予断を許さず、2021年の年次大会、夏季セミナー、秋季研究発表会、基礎講座に応用講座は全てオンラインで実施されました。年次大会においては455名の参加者となり、例年には及ばなかったものの、前年の秋季研究発表会の2倍弱の参加者規模のオンライン開催に、実行委員の皆様にはご苦労が絶えなかったと思います。西部支部にご担当いただきました夏季セミナーにおいては前年の中止を経ての開催でしたが、オンラインにも関わらず過去三年の平均を上回る方々にご参加いただきました。オンラインツアーと題した現地ライブエクスカーションが非常に印象深く、実行委員長をはじめ委員の皆様のアイディアと準備に費やされましたご苦労に、改めて頭の下がる思いです。当初、鳥取市での開催を前提に企画された秋季研究発表会でしたが、なおも新型コロナウイルスの感染は対面開催を許す状況にはなく、泣く泣くオンライン開催となりました。しかし、地元高校生が参加する高校生セッションなど新しい取組もあり、コロナ前と同等以上の320 名が参加されました。紹介が遅れましたが、1年間お休みを頂きました基礎講座については、内容を一新し「繊維科学技術の基礎から最新動向までを学ぶとともに、繊維を中心とした科学技術と産業の将来を考える機会(イベント案内より抜粋)」となり、オンラインの手軽さも手伝って、驚異の100名越えの参加者となりました。関係者として経済面での有難みだけでなく、基礎を学ぶ人が純粋に増えたことが、繊維学会の将来を考えている方々の励みになったのではと、心が熱くなりました。
さて、2021年の秋季研究発表会が開催されたころより、他学会ではオンラインと対面のハイブリッド形式の行事を見掛けるようになりました。この状況を鑑みて、本学会も2022年の年次大会のハイブリッド開催を決め、その予行として年次大会より小規模の技術講座をタワーホール船堀で開催するよう企画を進めました。予行としてだけでなく、この頃には多くの人が臨場感に乏しい現在のデジタル技術に少々飽き始め、会って直接話がしたい、目で見てサンプルに触りたいなどの要求に応える意味もあったのですが、当日は東京都内に再びまん延防止等重点措置が取られたこともあり、現地参加したのは全参加者66名のうち、殆どが東京都内からの十数名でした。講師の先生も半分以上がオンライン参加となり、寂しい会場であったと聞いております(申し訳なくも、著者も会場参加を急遽取止め、オンライン参加させて頂きました)。一方で、ハイブリット開催の試験は十分に果たすことが出来、後の年次大会ではこの時の経験が円滑なハイブリッド開催に大いに貢献しました。この流れで2022年は、大きな行事である年次大会、夏季セミナー、秋季研究発表会は全てハイブリッド開催となりました。但し、技術講座の経験から、聴くことが主となる講演会については、会場参加者が少ない割には労力と会場費等の費用が掛かるためハイブリッドの利点が生かせないと判断し、オンラインのみの開催としました。もう一つ、渡航の難しさから、国際会議であるATC-16もオンライン大会となりました。
2023年に入ると、マスク着用の考え方が変更されたり、新型コロナウイルスの分類見直しの議論が本格化したりしたことを受けて、多くの学会で、双方向での対話が必要な大会は対面のみの開催となってきています。逆に、聴講するだけの一方向型の講演会やセミナーは全面オンラインになり、画一化する傾向にあると分析しています。企画内容はもとより、アプリ環境に依存し差別化しにくいオンライン講座で今後勝ち進むためには、アプリを使いこなし対面と異なるオンライン独自の講義方式を打出せればと考えます。先ずは精鋭揃いの企画委員会から、これからもユニークな企画に挑戦します。
奥林 里子(京都工芸繊維大学 教授)
*繊維学会誌2023年3月号、時評より
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