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繊維学会の未来シナリオ
Future Scenarios for our Fiber Science and Technology
1年前の2023年3月号学会誌には、当時の企画担当理事の立場から「コロナ禍での行事開催を振り返って」と題し時評を執筆させて頂きました。あれから1年の間に、新型コロナ感染症の位置づけが2類から5類へと変わり、我々の生活はインフルエンザを気にする程度の、コロナ以前の生活に落ち着いたと思われます。2020年のパンデミックからの3年間は、特殊な事情のもとで学会が運営されることになり、様々なシーンで繊維科学技術や繊維学会の未来を考える機会がありました。著者においても、担当が企画から運営に変わったこともあり、今回は改めて繊維学会の将来について考えます。
2023年12月11日付で本学会のホームページに掲載されました「三学会合併に関する検討の再開についてのお知らせ」のなかでも記述されていますが、会員にとって繊維学会のあるべき姿がしっかりと議論されることは当たり前に重要なことでありながら、少なくともここ5,6年はそれがなされておらず、遅ればせながら2023年9月に将来構想委員会が設置され議論が始まりました。メンバーは年齢、性別、専門性、産業界/学界等のバランスを考慮した著者を含む17名と、経験豊かな3名のオブザーバーで構成されています。将来構想委員会には、財務担当理事、企画担当理事のほか、学会誌編集委員会、JFST 編集委員会と、新たに設置した国際連携委員会の各委員長にも参画頂いています(いずれも17名に含まれる)。将来構想委員会では、主に学会のミッション・ビジョン・アクションを議論しています。当初はこの3月号に掲載予定でしたが、現在最終調整中のためここでは概要を紹介いたします。
将来構想委員会では、ワクワクする学会を目指し、(1)学会の魅力度向上、(2)新分野開拓、(3)学術と技術の伝承(人財育成)、(4)会員増強・運営基盤強化、の4つのビジョンを提言しています。(1)では、「・過去の研究発表や講演内容を活用し、研究者と技術者のマッチングを推進、双方向の情報発信体制を整備することで、情報共有/発信プラットフォームを構築する。・年次大会等において、産学官や異分野との交流を拡大するとともに、繊維学会の専門領域をさらに深堀することで、三大イベントを深化させる。・戦略的に学会誌を充実し、JFSTのプレゼンスを向上することで、繊維学会誌およびJFSTの充実化を図る。」などのアクションプランが話合われました。(2)では、「・他分野との融合により、産学官連携プラットフォームを構築し、繊維技術ロードマップを社会実装する。・繊維学術ロードマップの作成することで中長期的な学術の方向性や道筋を再認識し、他分野との情報・意見交換により新分野開拓し、新たな知的基盤を形成する。・学生を含む産学官の研究者・技術者の国際人材ネットワークを構築し、国際連携を強化することで、国際共同研究・開発の企画運営によって新学術創成と産業価値創造・社会変革を主導する。」などが提案されました。(3)では、「・関連学会との連携により、講座事業をリニューアルし、繊維関連基礎教育をさらに充実する。・経験豊富なシニア会員と事業を協働することにより、若手会員のスキルを向上し、未来のリーダーを育成する。・産業界と連携した、実践的な学習の機会等を提供することで、学生会員の教育を強化する。」がアクションプランとして提案されました。(4)では、「・維持/賛助会員のニーズを調査・分析し、結果を反映した事業を提供することで、維持/賛助会員へのサービスを向上させる。・ 繊維学会の事業に参加経験のある非会員へ学会の魅力を伝えることで、非会員有識者の勧誘を図る。・学会運営を効率化し、活動支援体制の強化や委員等負担軽減により、会員活動を活性化する。・収入源を多様化し、コスト削減のための分析と具体的な措置を講じることで、財政の健全化を図る。」等のアクションプランが提案されています。現在は、これらアクションプランを実行するためのブラッシュアップと、具体的な方法(企画)についてディスカッションを進めています。早ければ4月号または5月号で、最終案を披露する予定です。
繊維学会が心躍る集いの場となり、会員の皆様が愉しんで活動できるプラットフォームとなるよう、将来構想委員会は今後もディスカッションを続けてまいりますので、皆様方にもお力添えいただければ幸いです。
奥林 里子(京都工芸繊維大学 教授)
*繊維学会誌2024年3月号、時評より
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