SFST's Voice
LINKS
- Home
- SFST's Voice
- 技術士のススメ
技術士のススメ
An Encouragement of Professional Engineers
繊維業界の中ではご存じの方も多いと思いますが、一般社団法人日本繊維技術士センター(JTCC)は現在、繊維技術士約280人の正会員を中心に構成され、「我が国繊維産業の活性化に貢献する」と「技術士集団として会員の資質の向上に努める」の2 項目を基本理念として掲げ活動しています。
1962年の設立以来、繊維業界の活性化のため、人材教育活動と各企業・団体向けに技術的支援を継続的に行うとともに、会員相互の交流会、先端繊維技術セミナーで会員の資質向上を図っています。人材教育活動は繊維関連学会とも連携して進めています。また資質向上は日本技術士会繊維部会とも連携して進めています。
技術士は1957年制定の「技術士法」に従い「科学技術に関する技術的専門知識と高等の応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた、優れた技術者」の育成を図るための、国による資格認定制度(文部科学省所管)で、産業経済、社会生活の科学技術に関するほぼ全ての分野(21の技術部門)をカバーし、先進的な活動から身近な生活にまで関わっています。21の技術部門のひとつが「繊維部門」になります。(公益社団法人日本技術士会のホームページを引用しました)
私は企業に在籍の30代には上司から「研究者は博士に、技術者は技術士」にと言われ技術士の取得を推奨されていましたが、社内・産地対応の仕事がほとんどで特に資格の必要性を感じることはありませんでした。ところが国内では繊維業界の縮小が始まり、海外生産へ移行することになり、40代後半には東南アジアで技術指導する必要がありました。この時、技術士(Professional Engineer)を取得し技術指導に当たりました。
現在、技術士事務所を開業、JTCCに所属し繊維教育講座、大学で繊維系講義の講師等を務めています。
これまで繊維技術士は大手繊維製造会社出身者が多くを占めていましたが、繊維事業の縮小を受けて、ここ数年は技術士になる方が繊維ストリームの中流・下流域へ広がり、アパレルメーカー、繊維機械メーカー、繊維周辺機器メーカー、加工メーカー、繊維加工剤メーカー、公設技術試験所等へ広がりを見せています。また30、40代の方も増えています。(JTCCの会員平均年齢も年々下がっています。)
技術士の試験内容も日本技術士会のホームページに詳しいですが、筆記試験では繊維技術の専門知識だけでなく応用能力、課題解決能力、課題遂行能力を、口頭試験ではコミュニケーション、リーダーシップ、等の実務能力と技術者倫理等の適格性を問われます。技術士の取得は「総合力を持った技術者」と認められたことになります。
技術士は企業引退後の活動の様に感じられている方も多いのではないかと思いますが、企業の定年延長、年金支給開始年齢の引き上げもあり、JTCCでは「セカンドキャリアからサイドキャリア」を掲げ、現役(企業内)技術士の方々にも活動しやすい環境作りにも取り組んでいます。最近は「働き方改革」で副業を認める企業も増えており、大学の先生方の学会活動の様になることを目指しています。
このため、技術士は個人資格のため、個人プレイになりがちで、JTCCは組織活動を行うため、共通基盤として「ガバナンスとコンプライアンス」を再認識する活動を継続しています。
JTCCの活動として特徴的なものは、「繊維技術の伝承」があります。繊維学会誌に掲載された「業界マイスターシリーズ」として「せんいの基礎知識」「アパレルの基礎知識」に引き続き「繊維産業資材の基礎知識」も出版すべく繊維学会と活動しています。また、昨年6月に刊行した「実践の染色読本」は一部のメデイアから「この分野、最後の一冊か?」と言われており、今年はこの本をテキストにした講座の開講も進めています。
繊維業界縮小の中でも、繊維技術者の方々の技術士の取得を進めるため、技術士受験講習会も開催していますので、多くの方の受験を期待しています。繊維技術士を取得し、JTCCの技術士交流会から始め、新しいネットワークをつくり、繊維業界のため一緒に活動しましょう。(繊維部門以外の方も会員にいます。他分野の方も歓迎します。)
西中 久雄(一般社団法人日本繊維技術士センター 理事長)
*繊維学会誌2024年6月号、時評より
- Home
- SFST's Voice
- 技術士のススメ