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化繊産業の課題と化繊協会の取り組み
Challenges of Chemical Fiber Industry and Activities of Japan Chemical Fibers Association
日本の化学繊維産業は、高機能・高性能繊維を中心とした先端繊維素材の開発と普及を通じて、持続可能な社会を実現する新たな価値の創出を目指しております。
近年、気候変動や循環型経済に向けた行動、人権尊重などサステナビリティに対する取り組みの重要性が世界的に加速しております。業界の対応及びその発信は、社会的責任として重要度が増しております。
このような環境下、日本化学繊維協会(化繊協会)は、①サステナビリティの推進、②競争力の基盤維持・強化、③情報発信の拡充を重点事業として活動を推進しております。
1. サステナビリティの推進
(1) 環境関連問題
化繊協会では以下を重点課題としてサステナビリティの取り組みを進めております。
- PETボトル再生原料を使用したリサイクル繊維の拡大
- 繊維to繊維リサイクルの実現
- バイオ化繊の拡大
- マイクロプラスチック問題への対応
- 化繊産業のカーボンニュートラル取組み
- 化学物質管理問題と環境負荷物質排出抑制
リサイクル、バイオ…リサイクル原料とバイオマス原料による化学繊維を規定する環境配慮型繊維製品に関するJIS原案を取りまとめました。現在はISO化に向けた作業に着手しております。
繊維to繊維リサイクル…経済産業省の繊維産業小委員会に協会長が委員として参画し、日本における繊維to繊維リサイクルの実現に向けた提言をいたしました。また「ICタグ活用による衣料製品でのトレーサビリティ情報のデジタル化に関する標準化」に関する調査を実施。今後は本調査結果をもとに、繊維to繊維リサイクルの際に必要となるトレーサビリティ情報に関する標準化に協力していく計画です。
マイクロプラスチック問題…繊維製品のライフサイクルで生じるマイクロプラスチック(繊維屑)による環境負荷の解明と抑制を進めています。その一環として、(一財)カケンテストセンターと協力し、洗濯の際に発生する繊維屑の測定法の標準化としてISO4484-3を発行しました。現在は、経済産業省、環境省、関係業界等と連携して、①上記繊維屑測定法によるデータ蓄積と対策検討、②海洋汚染、生物影響等科学的知見の情報収集、③洗濯機等の関連業種との対策検討、④日本からの繊維屑流出量の推計、⑤収集した情報の発信などを進めております。
カーボンニュートラル…2021年10月に公表した「化繊協会のカーボンニュートラルに向けた取組み」の見直しを行いました。最新データを踏まえ、化繊産業の燃料転換の進捗や今後の方向性を追記し、国際的に発信するため英語版も作成しました。「取組み」に関しては化繊協会ホームページに掲載しております。
アジア化繊産業会議…2024年5月に韓国で開催された第14回アジア化繊産業会議でもサステナビリティがテーマに取り上げられました。アジアの9ヵ国・地域が一堂に会し、アジア化繊産業の持続的な成長に向けての協力が活発に議論されました。日本からは「化繊産業の循環経済」をプレゼンしました。
(2)人権問題への対応
化繊協会は人権問題を重要課題ととらえ、2023年に人権DD(デューデリジェンス)対応連絡会を設置しました。サプライチェーン上の人権問題に関して、OECD等の国際的な動向や経済産業省、日本繊維産業連盟の動き、会員各社の対応状況等を会員各社間で共有。講演会等を交え、広く情報交換、意見交換を行ない、会員の人権対応に資する活動をおこなっております。
そのほか、責任ある企業行動ガイドライン、外国人技能実習制度や特定技能制度、取引適正化自主行動計画などの情報を会員に提供し、その適正な取組みの周知・徹底を幅広く支援しております。
2. 競争力の基盤維持・強化
化繊協会は標準化を競争力基盤のひとつとしてとらえております。上記のサステナビリティ関連の標準化のほか、コンクリート構造物補強用FRPシート、ウェアラブルデバイス、アクリレート繊維、繊維リサイクルロープなどの標準化に取り組んでおります。
繊維人材も重要な競争力基盤であります。化繊協会は繊維産地が実施する人材育成事業や大学へのサポートを行っております。
3. 情報発信の拡充
サステナビリティに関する情報発信を強化しております。協会ホームページの「化繊協会のサステナビリティ」コーナーで、会員各社の環境貢献の取り組みを紹介する「SDGs各社事例集」に「バイオ化繊」「水、空気を浄化する繊維」を追加。同コーナーの「化繊協会のサステナビリティ活動報告」に「マイクロプラスチック問題への対応」「繊維to繊維リサイクルの拡大に向けた取り組み」を追加しました。今後も更新に努めていきます。協会ホームページについては2024年度に全面リニューアルを行う予定です。利用者のみなさんがより使いやすいホームページにいたします。
展示関係では、2025年の大阪・関西万博開催による来場者増を見込み、大阪ATCグリーンエコプラザ「エコマークゾーン」の展示をリニューアルします。
化繊協会は繊維学会が主催するISF2024に賛同し、化繊協会コーナーを展示いたします。サステナブルな社会に貢献する化学繊維を展示し、広く内外の来訪者に訴求いたします。業界の発展に向け、今後も繊維学会との連携の場が広がることを期待しております。
竹内 郁夫(日本化学繊維協会 会長)
*繊維学会誌2024年12月号、時評より
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