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学会創立80周年から新たなる飛躍へ
From the 80th Anniversary To a New Leap Forward
新年あけましておめでとうございます。会員の皆様におかれましては、健やかに新春をお迎えのことと存じます。令和7年(2025年)の年頭にあたり、会長としてご挨拶申し上げます。
繊維学会は、1943年12月10日に繊維素協会と繊維工業学会が合併して設立されました。以降、80年を越え、時宜に応じて注力課題は変われども、繊維分野における学術の発展に貢献し、繊維技術により社会の要請に応えてきた歴史は、諸先輩方の研鑽と情熱、そして現在に至るまで多くの会員の皆様が築き上げてこられた学術基盤と信頼関係の積み重ねによるものです。昨年、創立80周年を記念した取り組みが様々に工夫、成功裏に実施されました。実行委員の皆様のご尽力の賜であり、あらためて感謝申し上げます。年次大会では、最新研究成果に基づく活発な議論が交わされるとともに、学会の歴史をまとめた年表により創立時の状況やその後の発展を、特別講演では繊維産業が日本の近代化を牽引した歴史などを再認識する機会となりました。また、皆様の記憶にも新しい、80周年記念事業として企画・開催された国際シンポジウムISF2024(International Symposium on Fiber Science and Technology 2024)では、国内外の研究者が最新動向や技術課題を共有し、特にバンケットに産官学の若手研究者や学生を含めて大勢が集い、活況に開催できたことは大きな収穫でした。その折、国内外のゲストの方々より80周年に対するお祝いの言葉を多数頂戴し、更なる発展を誓った次第です。当日披露できなかった国内関連学協会様からのメッセージを以下に掲載し、感謝申し上げたいと存じます。また、ISF2024との連携開催となった秋季研究発表会や高校生セッションでは、将来の繊維科学を担う若手人材、さらには科学技術への関心を高める生徒さんたちと直接触れ合う機会にも恵まれました。これらの取り組みを通じ、国内外の幅広いステークホルダーとの交流、人材育成、学術研究の高度化が着実に進展していることを実感しています。
しかしながら、我々が直面する社会的・組織的課題は依然として山積しています。環境負荷低減やサステナビリティへの対応、カーボンニュートラルに向けた素材・加工プロセスの見直し、高機能・スマート化・デジタル化の技術革新などに加えて、最近では生成AIやデータサイエンスの急速進歩により、繊維分野においても多様かつ迅速な変革が求められており、また、新たな国際的なイニシアチブ確立を目指す動きも活発化しています。このような変革の只中にあって、本学会が今後さらに発展・存続していくためには、また、その役割を果たしていくためには、将来を見据えた議論が欠かせません。近年、我が国は少子高齢化による若手研究者・技術者の減少や、学会の乱立や研究分野の拡大に伴う会員の分散化などにより、組織基盤の弱体化につながる懸念が高まっています。こうした状況下だからこそ、本学会はより魅力ある「総合知コミュニティ」へと生まれ変わらなければならないと思っています。そのためには、会員相互の率直で忌憚のない、時には厳しい意見交換を通じて、学会としての強み・弱みを真摯に見つめ直し、社会や産業界を含め、幅広い関係者に本学会の価値を再アピールしていくことが求められます。その際、互いの専門性や努力に敬意を払いながら、建設的な批判と議論を重ねていくことが肝要と考えています。
本学会としては引き続き、「心躍る集いの場へ」を目指し、4つのビジョン―学会の魅力度向上、新分野開拓、人材育成を含めた学術と技術の伝承、会員増強を含めた運営基盤強化―の実現・推進に取り組んでまいります。我々が進むべき道は、「開かれた学会」「挑戦する学会」「人材をはぐくむ学会」「社会に貢献する学会」であると確信しています。80年の歴史を持つ本学会が、社会的課題に対処しながら、国際競争力・発信力を高めるべく、新たな知と価値を創出していかなければなりません。そのためにも、会員の皆様の専門性や知恵、経験が必要不可欠です。現在、会員の皆様と、繊維系三学会合併の是非に関する議論をさせていただいています。解決すべき課題があるものの本学会の将来あるべき姿を実現しうる重要な方策の一つであると認識しています。その目的は、学術と産業を両輪に国をも巻き込み、「オールジャパン」で繊維関連分野を網羅して発展させる、新たな分野・視野を獲得する体制を築くことと思います。ビジョン・ミッションが共感できるものかどうかが第一義であり、加えて、それ実現するに財務や事務局の問題が解決できるか、最適化できるかも重要です。80年の歴史を有する繊維学会として、最終判断が合併如何によらず、大きな変革を成し遂げ、チャンスを手にする好機と捉えています。是非、多くの会員の方々に一緒に考えていただきたいと思っています。
2025年が会員の皆様にとって新たな飛躍の年となることを祈念し、また、本学会がより魅力的で活力ある組織として成長できるよう全力を尽くしてまいります。本学会のプラットフォームが皆様の研究活動や事業展開、そして若手育成に役立ち、我々が目指す持続可能で豊かな未来社会への一助となれば幸いです。
本年もどうぞ、本学会へのご支援・ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
辻井 敬亘(京都大学 教授)
*繊維学会誌2025年1月号、時評より
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