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100年後も続きますように
May It Last for Another 100 Years
昨年度に続き副会長を担当させていただいております。昨年2024年の繊維学会誌5月号には、当時担当していた財務担当副会長として時評を執筆させていただきました。それから半年あまりでの再登場となり、何を書いたら良いのやら頭を悩ましておりますが、まずは、運営担当副会長として取り組んでいることについてご報告いたします。運営委員会では、さまざまな事案について検討させていただいております。例えば、これまで繊維学会には他団体との共催・協賛・後援に関するルールが明確に定められておりませんでした。学会のガバナンス強化の観点でも重要なことと考えて内規の整備を進めているところです。また、2024年11月23日に辻井会長より「学会運営の改善に向けた取り組み状況について」というメッセージをホームページに掲載していただきました。その中でも述べられておりますが、一部の研究委員会・支部において会員様への会告がなされることなく行事が開催されている事例がございました。今後はこのようなことが無いように、研究委員長、支部長とも連携しながら会員様の信頼を回復できるように努めて参ります。そして、会員の皆様もご存知の通り繊維系3学会の合併に関する協議を3学会の関係者と進め、第1次合併協議会案を会員様のご意見を頂戴しながら検討しているところです。繊維に関係する研究者、技術者が一堂に会した日本で唯一の繊維関連学術団体として新たなスタートを切るという観点で、合併することが望ましいと私個人としては考えておりますが、一方で今後も繊維学会単独で活動を継続する将来像を構想しておくことも会員の皆様のご判断には重要かと存じます。先期の奥林里子運営担当副会長を委員長として将来構想委員会で議論されてきたビジョン・ミッション・アクションプランを実現するための議論を継続しております。できるだけ早く会員の皆様に提案できるように鋭意努力して行きます。
さて、上記の将来構想は数年から10年くらいの期間を見据えての活動ですが、思い切って100年後の未来について考えてみるのも一興かと思います。繊維学会誌の2023年1月号新春企画として「100年後の未来を考えてみる」と題して、20名の研究者・技術者よりご寄稿をいただきました。変化の激しい現代において10年後を予想するのも困難な作業ですが、100年後となると多くの方が困惑され引き受けるのを躊躇されました。当時の編集委員長として「妄想でもなんでも良いので楽しんで書いてください」と皆様にお願いしたところ、分野も年齢も異なる方々から様々な興味深い提案を頂くことができました。紙面の関係で全てをご紹介できませんが、「生体情報モニタリングシステムの確立による長寿命化」、「人の感性の理解深化と感性伝達技術の発展」、「3Dプリンタの技術進化による分子レベル印刷」、「その場で手軽に分解、手軽に再重合できる素材による究極のリサイクルの実現」、「ドローンを用いたマルチブレーディング技術による、究極のオーダーメードウエア」、「遺伝子組み替え技術により人類自らが絹糸生物へ進化」、「毎日ナノファイバーの服を直接体の上に塗布して纏う生活」、「セルロース分子の欠点を克服する分子制御の確立」、「生命維持装置を備えたカプセルファッション」、「生物のように多段階で階層的な構造を形成する自然に学んだものづくり」、「体への密着不要な衣服用センサの開発とトリリオンセンサユニバースの実現」、「宇宙服を発展させたようなPortable Environmentスーツを着用する未来」などのユニークな提案を多数いただきました。私個人としては、「生きている服」の実現を妄想しました。つまり、服が植物や菌類やあるいは人工細胞でできており、生きて成長する服です。人間の体表面の老廃物と汗を栄養源としているため洗濯不要で、夏と冬で厚さや空隙率を変化させて衣服内気候を調節してくれ、時には花を咲かせて目を楽しませてくれる素敵な服が実現したら素晴らしいですね。興味がございましたらJ-Stage(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/fiber/-char/ja)でPDF版を読むことができますので、是非ご一読ください(閲覧は会員限定となっております。各位の購読者番号とパスワードが不明の場合は繊維学会事務局にお問い合わせください)。
一説によると、人類は7万年ほど前から衣服を着るようになったとのことです。アフリカを出て寒冷な地域に拡散していったことからも衣服は重要だったでしょう。衣服は数万年も人類と共にあり、繊維は少なくとも数千年は衣服の材料として使われてきました。人類が自ら繊維を作りだすようになって100年と少しですが、繊維は衣服だけでなく私達の生活の様々な場所に活躍の場を拡大しています。これほど長い歴史を経て私たちと共にある繊維ですので、皆様が夢想してくださった未来を実現するために繊維に関する研究者や技術者は100年後もきっと活発に活動を続けていることを確信しています。繊維を愛する人々のコミュニティがどんな形であれ存続し続けることを願っております。
村瀬 浩貴(共立女子大学 教授)
*繊維学会誌2025年2月号、時評より
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