SFST's Voice
LINKS
- Home
- SFST's Voice
- 化繊産業の課題と化繊協会の取り組み
化繊産業の課題と化繊協会の取り組み
Challenges in Chemical Fiber Industry and Initiatives of Japan Chemical Fibers Association
日本の化学繊維産業は、高機能・高性能繊維を中心とした先端繊維素材の開発と普及などを通じて世界をリードし、地球環境と人々の健やかで豊かなくらしのため、未来に先駆けた課題解決策の創出を目指しております。
近年では、脱炭素、循環型経済などの地球規模の環境問題や人権への対応などサステナビリティ課題の重要性が世界的に高まっており、化学繊維産業においも社会的な責任を果たすことは、以前にもまして重要となっております。
このような状況下、日本化学繊維協会(化繊協会)は、①サステナビリティの推進、②競争力の基盤維持・強化、③情報発信の拡充を重点事業に掲げ、活動を推進しております。
1.サステナビリティの推進
(1)「繊維製品における資源循環ロードマップ」への対応
経済産業省が2024年度に取り纏めた「繊維製品における資源循環ロードマップ」では、2040年度の資源循環システムの構築と適量生産・適量消費の達成に向けての課題が示され(①衣料品の回収量の増加に向けた制度整備、②資源循環システム構築に資する技術基盤の整備、③繊維製品における環境配慮設計の推進、④アパレル産業における情報開示の推進・グリーンウォッシュ対策)、まずは2030年度をターゲットイヤーとした個別目標のKPIが設定されました。化繊協会でもこれに対応し、以下の取り組みを進めております。
・トレーサビリティ情報項目の標準化(JIS化)、環境配慮型化学繊維(リサイクル化繊、バイオベース化繊)の表示方法の国際標準化(ISO化)等【資源循環の効率化】
・化学繊維のLCAの算定手順の整備検討【繊維製品の環境配慮設計】
・グリーン購入法等の見直し検討【環境配慮型化学繊維(リサイクル化繊、バイオベース化繊)の市場拡大】リサイクル化繊、バイオベース化繊の表示のJIS化につきましては、2026年の制定を予定しており、繊維製品の適切な情報開示によって、環境配慮型繊維製品の一層の普及が期待されるところです。
(2)サプライチェーンにおける支援活動
化繊協会は今年度、「人権DD(デューデリジェンス)および取引適正化分科会」を設置いたしました。サプライチェーン上の人権問題に係る国内外の動向や会員企業の対応状況など、会員企業間で情報共有や意見交換を行うほか、2022年に公開された「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(経済産業省)や「繊維産業における責任ある企業ガイドライン」(日本繊維産業連盟)などに対応し、会員企業や関係先における適正な取り組みについての理解促進に努め、サプライチェーン全体における取引適正化を一層推進してまいります。
2.競争力の基盤維持・強化
(1)標準化活動の推進
化繊協会では、標準化を競争力基盤の一つに捉えております。標準化活動の推進による先端繊維素材の普及を目指し、上記記載のサステナビリティ関連の標準化や普及活動などに取り組んでいるほか、アジア化繊産業連盟に設置されている「標準化作業委員会」の共同事務局として、各国・地域の協調体制の構築に引き続き努めてまいります。
(2)情報収集活動、人材育成
繊維製品の海外展開においては、EUのエコデザイン規則(ESPR)や企業サステナビリティデューディリジェンス(CSDDD)など海外の法規制への対応などが必須となっていることから、化繊協会では海外の調査や有識者を招いた講演会開催などによる情報収集を行っております。このほか、大学や産地における育成支援などの取り組みも進めております。
3.情報発信の拡充
化繊協会は7月にホームページの全面リニューアルを行いました(https://www.jcfa.gr.jp/)。新コンテンツとして、身の回りで活躍する化学繊維をイラストで分かりやすく説明した「暮らしのなかのいろいろな化学せんい」や、化学繊維の基礎知識を紹介する「化学繊維の種類」「化学繊維ができるまで」などを掲載し、初めて化学繊維を学ぶ学生や社会人にも分かりやすく、一般の方にも親しみを感じてもらえるウェブサイトを目指しました。また、サステナビリティに関する情報発信強化の一環で、トップページ上部に化繊協会の取り組みとして「サステナビリティの推進」に係る活動を紹介しているほか、一般の方の疑問にお答えするため、「化学繊維のサステナビリティQ&A」も新たに追加しました。
このほか、情報発信の活動として、2026年2月に化学繊維の基礎知識を盛り込んだ「化学繊維を知ろう」の刊行物の販売を予定しているほか、常設展示「おおさかATCグリーンエコプラザ」の「エコマークゾーン」の化繊協会コーナー(大阪府大阪市)の充実も図っていく所存です。
化繊協会は、繊維学会及び信州大学との共同展示「疾走するファイバー展」に協力しているほか、繊維学会主催の学術イベントへの参画をはじめ、国内繊維分野の産学連携基盤強化に向けて、より一層力を入れて取り組んでまいります。今後も貴学会との連携の場が広がることを期待しております。
内川 哲茂(日本化学繊維協会 会長)
*繊維学会誌2025年12月号、時評より
- Home
- SFST's Voice
- 化繊産業の課題と化繊協会の取り組み